藤沢

読了の60。

背景は、将軍家と幕府の中枢と、権力にまつわる暗闘。
主人公の視点にはそれに加えて、己が剣の道の行く末への思いと、情を交わした女子との結末がある。
彼は剣は達人だが、若い。

意外にも幾組もの男女が登場した。そしてそれぞれが、事情を抱え、それぞれの物語の結末を迎える。ちょっと藤沢には意外な恋愛ドラマ的な要素があった。
とくに旗本総領息子の絵師と、その異父妹とのすれ違いは切ねぇ。

最後には壮絶な斬り合い、集団対集団の衝突である。
義憤に駆られた若き剣士が、卑劣漢の邪剣を破る様は痛快であり、事件の収束を見届けた後に約束を交わした女性のところに戻る様は爽やかだ。
だが、最後の一幕。終に姿を現さず、謎のままに陰謀を操っていた黒幕が、闇の中で哄笑する。その不気味さにぞっとする。