探索の終

とりあえずトゥルー・リザレクションが三発とんだ。死んだ冒険者は、全員生き返った。



宇宙の生命の具現が意思を持ったもの、というか、そんな感じの概念的な方々がやってきて、丁寧に謝礼を。
んで、礼を言うには先ず生きていてもらわんと、と言わんばかりに生き返る。
ポジティブエナジーがあふれんばかりに満ち足りた場所なんだよな、改めて考えてみれば。
この領域で一番難しいのは、死ぬことかむしれんね(笑)


お土産に命を貰ったりしながら、主物質界に帰還しました。
うむ、冒険の終焉だな。
各人、それから如何するのか、話し合ったり。
新たな冒険に出るもの。ここで休息とするもの。様々です。
ジョナサン・ブッカーズは此処で冒険を降りることとしました。
もとより、故郷オークハーストの危機に立ち上がった彼です。平和が訪れれば、オークハーストの神殿で、故郷の為に働くのが通りでしょう。


故に、キンケドゥブックス探索記、ここでひとまずの終幕となります。
皆さんお疲れさんでした〜。


ジョナサンは少年と出会った。
少年はジョナサンの記憶にある通りの姿で、故郷の町にたたずんでいた。
喩え様も無い懐かしさが胸にこみ上げるのが自分でもよくわかった。



ジョナサンは、一冊の本を差し出した。
「この本は君の物だ」
少年は、本を受け取った。
そして魅入られたかのように、その本を繁々と眺めていた。
少年は本を開いて、中を見てから言った。
「読めないよ?」
ジョナサンは答えた。
「今はね」
少年は不思議そうな顔をしたが、少年の瞳の中に、きらめく好奇心の光が踊ったのを、ジョナサンは見逃さなかった。


「他に質問はあるかい?」
今度は、ジョナサンが少年に話しかけた。
少年は、しばし考えた後、次から次へと疑問を口にした。
その一つ一つに懐かしい思いを抱きながら、わかる範囲で、そして出来るだけ簡素に、少年の問いに答えて言った。
少年の質問は、世界に対する新鮮な驚きに満ちていた。
ジョナサンは少年の瑞々しい感性に驚嘆した。


少年は目を丸くしていった。
「すごいねぇ。きっと、分からない事はなんにも無いんだね」
「いや、そんな事は無い。わからない事だらけだよ」
ジョナサンは心の底からそう思った。
なんと世界の驚きに満ちたことか! 世界には不思議でない物など、ないのだろう。



ジョナサンは、懐から金鎖の時計を取り出し時間を確認した。
「時間だ。いかなくてはならない」
「どこに行くの?」
少年は問うた。
ジョナサンは笑った。幼き日の、なんと問いの尽きぬことか。
「答えを探すんだ」
「僕も行ける?」
少年は、本を抱えながらジョナサンを見上げていた。
「いつかは。その時は、私があげたその本を忘れないように」
ジョナサンは時間転移の準備に入った。淡い燐光がジョナサンの身体を包む。
少年が慌てて叫ぶ。
「タイトル!この本のタイトルは?!」
時間管理者への祈念を行いながら、ジョナサンは少年に最後の言葉を送った。
「タイトルは自分でつけるんだ」
次の瞬間、ジョナサンは超時間移動に入った。
自分は、あの本のタイトルを知っている。
かつて、命の産まれる、禁じられた次元領域で失ってしまった本のタイトル。
ジョナサンは幼い日の自分が、旅人から貰った本に「キンケドゥブックス探索記」とつけることを知っている。
我ながら稚拙なセンスに、ジョナサンは少し笑った。