老いたる英雄

ガガックは語る、プリシラは彼の心に安らぎという毒を注ぎ込んだのだと。
ゆえに、幕下の術士イルヒキーンの策謀と造反を見抜け無かったのかも知れぬ、と。
イルヒキーンによりプリシラの遺骸が持ち去られたことを語る時、ガガックの顔には深い苦渋が、ザビーネの瞳には強い怒りが浮かんでいた。

11年前、オークの大王アハルザンドの登場と共に、一斉に南下をはじめた北荻。ガガック衝撃軍もその陣中にあった。
その最大の激戦地、ペイロアの聖地「夏の天蓋」攻略においてガガック衝撃軍は多大な戦果を挙げ、略奪の限りを尽くした。その時の略奪品の中に、プレイティアラの母、プリシラが含まれていたのだ。
プリシラを手にしたとき、オーガ・メイジのイルヒキーンの中に啓示が降りた。
全知にして無能なる存在。遍く世界、全ての時間に存在する恐るべき意識。宇宙を飲み込む大暗黒、絶対の狂気。
タリズダン。時の始まりから存在する外なる神。
「我を解放せよ」
ただのオーク・メイジはその瞬間、狂気の僕となった。
この時空ではラオの図書館に封印された邪神、だがミツツキ城からならばその封印の地にいたる道がある。
伝説と神秘に隠されたミツツキ城だが、タリズダンの意識に触れたイルヒキーンならば、その城の場所を探し出すことが出来る。
かくて彼はガガックを誑かし、ミツツキ城探索へとガガック衝撃軍を導いたのであった。

ミツツキの姫よりアーティファクトを賜り、不死となったイルヒキーン。そのアーティファクトを得るには、三つの鍵が必要という。
一つはトロールのゴズルナグが持ち去り行方不明に、一つはレイブンスカル呪兵団の頭目レイブンスカルが持つという。
そして最後の一つのありかの情報については、ガガックは条件を出した。
「このまま老い腐り死にとうは無い。最後は戦いを、誇りある戦士との決闘を望む!」