海泡 (中公文庫)

海泡 (中公文庫)

新年、遅い読書。正直、読む時間は減っている。
ようやく、読了の01。

ニヒリズムにみちた、主人公の語りが切れ味がよく、読んでいて気持ちいい。
とある不審死にまつわる事件を追う、いわゆるミステリやサスペンスなのだが。しかし、物語は、描写や舞台立て、主人公の独白と合いあまって、文学的ですらある。
や、それは、一人の白い少女と、失われ行く幻想と、そしてその最後が、大きな原因ではあるのだが。
光り輝く、夏の小笠原。しかし、主人公にとって、そこはもう、喪の島でしかないのがさびしいね。

小笠原には一度行ってみたいと思っていた。
船が、一週間に一本しかないのがいい。船が無い間、何をどうしても、帰れないのが、凄く魅力的だと感じていたのだ。
もし、この先、本当に小笠原を訪れる事が出来たのなら、この本を持っていくのも面白かろう。そういう楽しみは、実に素敵だ。
(作者、一週間しかアノ島にいなかったらしいけどなー)