2005年のロケットボーイズ (双葉文庫)

2005年のロケットボーイズ (双葉文庫)

読了の57



何年か前に深夜ドラマで、高校生がキューブサットに挑戦する話をやっていた。その原作がこの本。最終回、観てなかったんだよねェ。
キューブサットを題材にしているが、この本の眼目は宇宙に非ず。上等の青春小説よ、これ。



主人公は、意に沿わぬ高校に通う事となった不運な少年。なじまぬ工業高校で周囲から浮きつつ、息を潜めるように三年間を過ごそうとしている。当然面白いわけがない。
ところが、思わぬ失態から、教師から学生キューブサット計画に参加を命令される。やんなきゃ退学。
あれよあれよと事態は動き、気がつけばのっぴきならぬ状態、渦中の中心は自分自身。
キューブサットどころか、工業高校に通うにもかかわらず、少年は数学物理電気電子電脳宇宙にさっぱりの人。頼みはどうにか集めた仲間たちなのだが、コレがやはり主人公と同じくはみ出し者の極めつけの変人ばかり。したがって少年、調整と交渉に奔走する事となる。
本番はTV中継も入る、キューブサットコンテスト。ゼロからどころか、マイナスからの挑戦が始まった。



いや、実に面白かった。ドラマを見ていたので流れは把握していたのだが、それでも大変楽しめた。とくに中盤、ターニングポイントの事件は、分かっていたとしても引き込まれる。書き出し文の軽妙さだ。
うん、文章が独特で最初面食らうけど、そのうちに慣れる。慣れてくると、ノリつっ込みの如き一人称視点の文体が、洒脱で巧妙、みょうに楽しくなってくる。コレは上手いなぁ。



はじめにも書いたがこの話の主題は、世を拗ねた主人公が、仲間と共にだんだんと一つの事に熱中していく過程をかいたもの。青春小説。
なので、科学工学の詳しい話は出てこない。それどころか、結局ロケットすら出てこない。宇宙物だと思っていると、えらい肩透かしを食らうぜ。
しかし、青春ドタバタコメディとするなら傑物。
まぁ、ラノベだと思って読めば間違いは無い。