■メモリー (上)  ロイス・マクマスター・ビジョルド


読了の15

L・M・ビジョルドの所謂マイルズ物の最新刊。しかも、ちゃんとマイルズが主人公なのは久し振り。
間に色々挟んだからなぁ(「ミラーダンス」はともかく「遺伝子の使命*1」はなぁw)
バラヤー帝国の貴族、マイルズ・ヴォルコシガンは先天的な身体の欠陥を抱えた「ミュータントのちびすけ」。機密保安庁の職員の身分も、親の七光で手に入れたと周囲は思っている。
しかし、ひとたび皇帝の特命があれば冴えない中尉の衣を脱ぎ捨て、「デンダリィ自由傭兵艦隊」の名うての司令官、ネイスミス提督として秘密任務の指揮を取るのだ。

ああ、なんか普通のスペオペみたいに錯覚させる説明だな(笑)
主人公のマイルズ。劣等感を芯に、貴族の義務と虚栄心をコーティングしたみたいな人物。酷いかんしゃく持ちで、冷笑的なユーモアを持ち。帝国に並ぶもの無い大貴族の御曹司でありながら、先天的に脆弱な身体を持って生まれた、帝国社会では被差別人種。まこと複雑な人物。
得意技は横紙破り。自分に不都合な現実を(決定的なハンディキャッパーだからね)独自の解釈で流用し、越えられない壁は、わき道を見つけたり、裏口をこしらえたり、壁自体を爆破したりする。
機知で勝負するタイプの主人公なのだけれど、彼のそれは酷いペテンだからなぁ(笑)

ソンナ彼の「発明」がネイスミス提督。
提督はヴォルコシガンの持ってないものを一杯持っている。恋人とか、愛人とか、艦隊とか、優秀な部下とか。
ちびのヴォルコシガンには恋人どころか、友達だってろくに居ないのに。
今回のお話は、ヴォルコシガン中尉がネイスミス提督を失うところから始まる。無様な失態と、それをごまかそうとした愚かな虚偽によって。

モリーのタイトル通り、マイルズの回想シーン、というか過去の話を振り返る場面が多い。内面にもぐっていきアイデンティティを確認する作業だ。
それはいいんだけどさ、付き合ってるこっちは結構忘れちゃってんの、昔の話(笑)
17歳でスタートしたマイルズの冒険譚、今作で彼は30歳。それなりのエピソードがあるわけですよ。(彼のお母さん(!)の話を含めるともっとだ)
調度引越しで本の整理が必要だし、マイルズ物を押さえて胃奇異読みを試みるには良いかもしれない。

*1:ホモ惑星の医者が主人公でヒロイン