日本沈没

スピリッツ連載のマンガ版、一色登希彦
もとより、原作の小松左京が試みたのは、日本を失った日本人のアイデンティティーのありかに対する思考実験である。
が、それは小説のはなし。映画では崩壊していく日本列島こそが主役であり、ヴィジュアルを求めて人は作品にのぞみ、日本人を日本人足らしめる、「日本人の本質」への回想といったテーゼは、題目としての形骸としても残してはいない。そしてもちろん、それは映画としては正しい。(そうさ、ぼくだって、崩壊していく世界を手をたたいて喜んだものだ)
さらにはマンガなる低俗なエンターテイメントにおいては、なにをかいわんや。
昨年末から始まった、東京崩壊の一連の描写の、挑戦的なこと、挑発的なのこと。
今までの展開の、じわりじわりとくる息苦しさを。転じて突き抜けたようなカタストロフ、破壊破壊、無残無残、残酷に残酷に、悲惨あまりに悲惨。逃げ惑い、醜くひき潰されれ、すりつぶされ、引き裂かれ、燃やされ、沸騰し、絶叫し、諦めて、泣き叫ぶ。
延々と続く残酷描写。昭和中期に流行った、漫画作法を髣髴とさせるじゃあないか。そうだ、マンガは低俗なのだ。

インタヴューで作者は全十巻を予定しているといった。最後の一冊はエピローグ的なものになるだろう。東京崩壊は4巻アタリからだろうか。
つまりは、マンガにして丸々五冊、この悪趣味極まりない残酷劇が展開されると言う事か。
そのときボクは、おそらく顔を手で覆いながら、しかし指の隙間からしっかりと、この物語を見つづけるに違いない。強い好奇心と、性的とも言える興奮に突き動かされて。

出版社の腰が引けて、発禁にならなければ。だけど(笑)*1
(よくあるんだ、これがw)

*1:とはいえ、最近のスピリッツはとても挑発的で、凄く刺激的だ。今週の柏木ハルコの新連載のオープニングなんかどん引きですよw!期待しちゃって良いのかね?w