二つの戦争

早起きをした。
早朝、五時過ぎには駅のホームに立っていたのである。
設備関連の雑務で工場に向かわねば為らないからなのだけど。
ホームに立ってるのは朝帰りの若者と、帰宅するお水のオネェさま方。
オネェさん達、日本語しゃべってる人が居ない、そういったものなのだろう。

せっかく早起きをしたのだ、出来る事なら三文くらいは得をしたい。
本来考えていたのは靖国神社に行くことだった。
終戦記念日もあったことだしね、何より博物館がありまして、其処に興味があったのですが。
あー、通勤電車(帰りは朝の通勤時間帯w)に揺られながら、熱い夏の空を見上げる。
坂だらけの市ヶ谷の町を思い起こせば行く気もうせる。
(まぁ、僕という人間を能く表す話だなw)
かといって、家に帰ればビールを飲んで昼寝になるのは間違いない。
それは避けたい。

かくて妥協案は日進で映画となりましたとさ。

時間を考慮に入れてチョイスしたのは、二本の戦争映画だった。
偶然なのだがね、当初の予定に対する奇妙な符丁。
夏なのだから当然とも言えるのだが。
以下、多分にネタバレを含みます、ご注意を。

○「妖怪大戦争
あー、其処の人。者を投げないように。いや、戦争物でしょ?一応。
プロデュースがチーム「怪」で話題の映画、気にはなっていました。
監督は三池崇史、むしろ僕はこちらの方に違和感が。どうよ?三池妖怪ってイメージは。
見所はやはり加藤保憲なのでしょか。
いや、いやかっこよかったですよぅ!軍服でなくてコート姿。
高いところにたって見栄を切る、圧倒的な存在感!いよっ!豊川屋!
でもねえ、それでも彼は脇役。
映画を終始支配していたのは主人公、天才子役の呼び声も高い神木隆之介君です。
先ずは美形、スラリとしたスタイル。線の細い面立ち。
少年に求められる色気を完全に備えてます。
しかも、その演技たるや!
居並ぶヴェテラン、個性派、お笑い系、全てを向こうに回して全く引けをとらない!
少年の心の成長を十全に観せる、情動と活動。良いですよ。
サービスシーンも満載で、お風呂とか生着替えとか(尻、がな)
その少年に向こう張ってアクションを魅せるのは我らが栗山千明
エロイ!強い!おっかない!これぞ栗山クオリティ。
しかも衣装もちでねぇ、シーン毎にコスチュームが違うし。
キューティーハニーかよw
他にも色々と、書き出せばきりが無いw
前編にちりばめられた悪ふざけ、大真面目な悪ふざけがとても良くて。
とにかく陰湿で、根が暗くて、大真面目な加藤保憲
対する妖怪の不真面目で、能天気で、朴訥とした愛すべきキャラクター。
「妖怪は戦わないんですよ」
チーム「怪」が監督に語った言葉どおり、妖怪は殺し合いなぞせんのです。
うらんで、憎んで、復讐を行うのは人間にあるのですねぇ。
陰気を払うのは、何処までも陽気。酒を呑んで、唄って踊れ。
邪気、マガツを追い出すのは祭りが一番、騒げや騒げ。
水木大先生曰く
「戦争はいけません。あれはぁ、腹が減るだけだぁ」
なんだ、立派な反戦映画じゃないか。

○「亡国のイージス
打って変わって骨太の男のドラマ。
寺尾聡が真田広之が中井喜一が。
そして佐藤浩市が、ああ佐藤浩市が。(新撰組の芹沢が良かったんだよぅ)
乗っ取りを受けたイージス艦
ドラマは、現場であるイージス艦内と、それに対応する会議の現場を交互に映していく。
国家の有り様、国防の有り様。
重いテーマを含みながら、ドラマは男の意地と誇りと、純情なまでの理想のぶつかり合いを観せる。
正直言ってしまえば、反乱の首謀者であるイージス艦の副長のような男はキライだ。
主義が主張があり、確信犯として行動を起こし、言いたい事だけ言ってかっこよく自決する。
何たる無責任。
寺尾聡の人情味あふれる演技と相あまって、終始その行動に苛立ちを覚えた。
(この辺、僕がどれだけこのドラマに嵌っているかの証左で有るのだけれどw)
事後、反乱グループを待ってるのは、順当にいけば裁判だ。
そのとき首謀者が死んでてどうする。
オノレはかっこよく部下たち「生きろ!」とか言っておいて、生き残った部下を被告席に立たすのか。
しかも、反乱の契機となったのが自分の息子の不合理な死であるという。
まったく私的な感情を義憤に摩り替えて、しかも自覚がある。
あーイライラ、イライラ。
打って変わって、中井喜一の演ずる某国の工作員が渋い。
多くを語らぬ事件の計画者。全ての黒幕。
純情とまでいえる行動原理。
妹が死んだ時、部下が自決を選んだとき。語らぬ、がゆえに重い沈黙。
全く説明は無い。だが伝わる情けの深さ、愛の深さ。
あまりにもかっこいい役どころ、こういうのに弱かったのかオレ。
特にお気に入りは、佐藤浩市の扮する秘密情報局長との短い会話。
「あなた達は何時になったらこれが戦争だと理解するのだ」
あー、ちなみに珍しく日本国首相がかっこいいですw
会議を常にリードして(ぶつくさ言いながらナ)適切な判断を下して。
最後に無言でドッカリと椅子に座り込むシーンがよろしい。
自衛隊の全面協力のイージス艦、そしてF2(うわーい)
工作員の銃器の選択とか、大変見るところは多いですよ?
問題があるとすれば、軍服の人は皆同じに見えて見分けがつきづらいところか。
戦争映画はミンナそうなんだけどねぇw

お腹イッパイにして映画館を後にする。
や、本とはもう一本みたいタイトルもやっていたのだけれど。
ヒトラー 最後の12日間
流石に消化不良を起こしそうでw