紫陽花の頃

鎌倉へ行く。
紫陽花を写真にとって回ろういう企画。
たくさん歩きましたよ。
閑静な中に、寺社が点在するところを散策するのは好きです。
切り通し、よいなぁ。鎌倉ならではの風景ですね。
流石にくたびれて帰宅、11時は周っていたか。
*  *  *
「よぉ、帰ってきたかい。待ってたんだよ、邪魔するぜぃ。」
「やぁ、あなたは脳内長屋の住人、浪人の伊佐坂*1さん。」
「買い物かい?」
「ええ、鎌倉まで。」
「なんだい、その長い包みは?」
「清麿と言います、ごらんになりますか?」
「なるほど、刀かい。じゃぁ、お言葉に甘えて拝見させてもらおうかね。」
「ほぅ、これは・・・」
「いかがです?」
「ふむ、わからねぇ。オレァ目利きとかはサッパリだからよ。良いものなのかい?」
「はは、私にもわかりません。」
「にしちゃぁ、やけに嬉しそうじゃねぇか。」
「判りますか。」
「わからいでかよ、やに下がってて見ちゃ居られねぇ。」
「これは、相変わらず手厳しいですね。」
「話せよ、なんかあるんだろ?」
「人が、これを作った人が好きなのです。」
「清麿とかいう男の事かね。」
「ええ、長い話になりますよ?」
「かまわねぇよ。なぁに酒の仕度ならしてある。」
「用意のよい事で。」
「ああ、コイツをアンタと呑ろうと待ってたんだ。じめついた日ににやぁ、焼酎に限るねぇ。」
「ふふ、そうですねぇ、何から話しましょうか・・・」
「いつごろの産まれだい?清麿さんは。」
源清麿が生きたのは江戸の末期と聞きます。」
「ほう、それで?」

大振りの湯飲みの中に、湯で割った焼酎が満たされている。
肴は干魚をあぶったもの、そして昔語り。
酒宴は、ゆったりと明け方まで続いた。

*1:伊佐坂 一文字(いささか ひもじ)垢じみた貧乏浪人、博打で暮らしている。かつては一流を修めた剣客であったという。