用心棒

凶刃―用心棒日月抄 (新潮文庫)

凶刃―用心棒日月抄 (新潮文庫)

読了の58


藤沢周平、用心棒シリーズの最終巻。
時代は下り、それから一六年。青年剣士、青江又八郎もヨワイ四十の半ばを越えた。働きに見合う役職を得、若い者に苦言を述べる様にもなったし、一男二女を設け一家の長としても充実の時を迎えた。やや、下腹の肥えっぷり気にはなる様にはなったが。
その青江に再び密命が下る。藩内に、戦国の頃から影働きをしてきた秘密組織の解散が決まった。そのことを江戸に知らせに行くのである。
再び江戸へ…。それは、かつて共に白刃死線を潜り抜けた人々との再会を意味し、また、若き日の青江の青春の姿の幻影を見る、と言うことでもあった。
組織解体と同じくして、何物かによる暗殺が次々と行われる。凶刃は青江にも及び、さらには江戸に居る者達にも。はたして、中年となった又八郎は、昔と同じく剣を振るって難敵を退ける事が出来るのだろうか。



藤沢周平の作品に特徴的な、若き日の輝きと、老いの寂しさ。
今作品は、三冊を通して若き用心棒の活躍を描き、その上で最後に中年を過ぎた主人公の再会と追憶を書いた。これは効く。前三作はすべて連作短編の形式で書かれているが、最終巻では長編として、みっちりと書き込まれているのも大きい。
藤沢は人生の光と影なのだなぁ。
や、しかし終わり方は、案外軽い感じで幕引き去れている。そうだなぁ、青江又八郎、未だ老境には到らず。人生に、もうひ地波乱あってもおかしくないものな。