新装版 よろずや平四郎活人剣 (上) (文春文庫)
新装版 よろずや平四郎活人剣 (上) (文春文庫)
読了の45
神名平四郎。知行一千石の旗本の子弟、しかし実質は、祝福されざる冷や飯食い、妾腹の子である。
思い屈し、実家を出奔、裏店に棲みついたまではよいのだが、ただちに日々のたつきに窮してしまう。
思案の挙句、やがて平四郎は奇妙な看板を掲げる。
……喧嘩五十文、口論二十文、とりもどし物百文、よろずもめごと仲裁つかまつり候。

(裏表紙、解説文より)

いままでオレが読んだ藤沢周平が「大江戸サラリーマン物語」なら、この本はさしづめ「大江戸探偵物語」といえようか。
主人公、神名平四郎*1。雲弘流の腕前も達者なのだが、剣を切り売りするを不純と考え、もう一方の得意、弁口によって口銭を稼ごうと考えた。
なんとも、剣と同じほど口も達者な若侍なのである。
時は折りしも天保のご改革の頃。老中水野忠邦による質素倹約の触れが江戸市中にいきわたり、それを破る物には厳しいお咎めがあった。江戸の繁華街は死んだように打ち静まっている。
オレらの感覚に直せば、バブル経済崩壊後の東京だろうか?どちらを向いても不景気不景気、活気の無いことおびただしい。
街行く人々が皆、どこかしょぼくれて歩いていく、そんな冴えない江戸の街で、本人言うところの「ざっかけない」商売に精を出す主人公。
神名平四郎、どうにも能天気な若者であった。

*1:かんな、と読む。ついカミナと読んでしまって、脳内で変な変換をしてしまうw