ツンデレ

エルフ用背景 「追憶」

 所々の開いた裂け目から曙光が滑り込み、破壊された室内をゆっくりと撫でて行く。
すでに夜は明けたのだ。
ながい、長い夜は。
全ては完了した。歪みは修正され、邪悪は滅せられ、弱者は救われた。
もちろん、その為の代償はあった。だが、些細なものだ。
そう・・・ささいな・・・・
衣擦れの音に振り向いた。立っていたのはドルイド、少女を連れている。
「・・・禁書と幼子は神殿が、この子はワシが預かる事とした。」
法衣の男に視線を送る。死者に手向ける祈りを奉げている。
ドルイドが痛ましげな眼差しを自分に向ける。
何故、そんな顔をする?
あれだけの強大な魔界の者に、被害が一人だけと云うのはむしろ幸運と言えよう。
・・・無論、悲しむべき事ではあるが・・・・・。
 そう言った私の顔を見て、ドルイドは堪らず目を伏せた。
なにをバカな、愚かしい、直ぐ感情的になる、これだから人間というのは。
だいいち、我らは目的が共通であっただけのこと。
そもそも、出会ってから然程月日も経ってはおらぬ。
だいたい、あいつからだぞ私を誘ったのは。
もとより、私は忠告した筈だ。おまえの様なバカは早死にすると。
まったく、短慮で、短気で、喧嘩速くて、下品で、意地っ張りで、我儘で、ずうずうしくて、浪費家で、涙もろくて、お人好しで、・・・・・・。
 不意に視界がゆがんだ、熱いものが頬を伝って落ちた。
感情が思考を食い潰す、自身に集まる感情の精霊を制御できない。
「なんてことだ・・・・酷いな。オマエは私のココロを壊してしまったぞ。
・・・・どう、責任を取ってくれるのだ。・・・・・馬鹿め。バカメ!」
答えは無い。
人間は死後、神の御許に逝くと言う。なれば、もう逢う事も無いだろう。
神を信じぬエルフが、死後同じ所に行く道理は無い。
強い情熱を持つ人間が死んだ。
熱い感情を私の心に刻んで死んだ。
私は変わってしまう。
もう、普通のエルフとは、違ってしまう。
胸を強く握った。
また、熱いものが零れ落ちた。



昔書いたソードワールド用のシナリオハンドアウト
ハンドアウトっていうかオープニング小説みたいな。

ツンデレっぽいので。